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高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)−更新22

 2004年2月12日 WHO(原文

 



タイの(ヒトの症例)状況

タイの公衆衛生省は、国内第6例目のH5N1型感染例を確認した。この症例はチャイヤプーム県(Chaiyaphum province)の13歳の男児である。暫定的調査で、この症例は自宅近くで感染した鶏との接触歴があった。

ベトナムの(ヒトの症例)状況

ベトナム保健省は本日、もう1例のH5N1感染症例を確認した。この症例は死亡例であるが、19歳男性でホーチミン市(Ho Chi Minh City)の病院に入院していた。

本日までのところ、ベトナムからは19例の確定症例が報告され、このうち14例が死亡している。

ベトナムの患者に関する初めての(臨床・疫学)データ

WHOは本日、ベトナムの集団発生における10人のヒトH5N1感染症例に関する初めての臨床および疫学的データを発表する。このデータは、症例の治療や調査に直接関わった、ベトナムの臨床医、疫学者、実験や検査を行う研究者らによりまとめられた。WHOはこれらの執筆者が、その知見を直ちに発表する許可をくれたことに感謝する。

ベトナムのインフルエンザA(H5N1)の暫定的な臨床および疫学的描写原文


これらの症例の完全な報告はNew England Journal of Medicine に掲載を受理された。

タイの検査確定症例5例に関する臨床的情報は、WHOにより明日の朝に、Weekly Epidemiological Report に公表される。


現在の集団発生にかかわる合計15症例の臨床データの公表は、症例の全世界的サーベイランスと早期検知の助けとなるような、H5N1感染によって起こる病態に独特な徴候の解明に非常に役立つ。診断の確定が、適切な診断検査の情報に基づいて行われている世界的な報告のための症例定義(英語)が、WHOにより昨日発行された。


1997年香港の臨床データ

現在に至るまで、ヒトにおけるH5N1感染症に関する知識は、1997年の香港における18例の臨床的研究に限られていた。この集団発生では、患者は1歳から60歳までにわたり、消化器症状、肝炎、腎不全、汎血球減少を認めた。これらの所見からH5N1感染は、呼吸器症状が主であるふつうのインフルエンザに比べて、より多くの臓器や身体組織に影響を及ぼすことが示唆される。また、通常のインフルエンザとは異なり、6症例の死亡は細菌による二次感染よりもむしろ、一次的なウイルス感染の結果起こった。

集団発生が起こって1ヶ月

最初の3例のヒトのH5N1感染症例が検査確定したことは、1月12日に発表された。今日、集団発生が起こって1ヶ月になるが、WHOは相互に複雑に関連した、ヒトと家禽類での集団発生の重要な出来事の時系列表(英語)を公表する。

WHOはまた、疑わしい症例に対する警戒状態を維持し、ヒトおよび動物において疾患が疑われる場合は、それを迅速かつ透明性をもって報告する必要性を強調している。家禽類における鳥インフルエンザは、いくつかの地域でいまだに広がっている。他の地域でも、鳥での集団発生の制御が進んでいることがすなわち、ヒトの健康に対する危険が制圧されたことにはならない。

家禽類における集団感染が発生している国のなかには、大多数の地域の鳥が飼育されている田舎において特に、保健医療関連の基盤整備がなされていないところがあり、症例検知能力も弱い。H5N1のような難しい疾患を診断する能力も、そういった国ではまた弱い。さらに、本日および明日発行される臨床的な資料が示唆するように、H5N1感染の完全な臨床像は不明である。軽症例が発生し、未だ医療スタッフの注目に至っていないのかもしれない。

本日のベトナムからの報告で記述されているとおり、「これらの(10)症例は、三次救急病院の、すでにこの疾患の発生を警戒していた臨床医によって特定されており、そのままH5N1が引き起こしている疾病の全容を表していると受け取ることはできない」。

これらすべての理由により、現在の検査による確定症例の数の少なさは、ヒトの健康に対する、既存の、あるいは将来的に可能性のある脅威の大きさを、正確に表しているとは考えられない。

抗ウイルス剤に対するH5N1ウイルスの感受性

WHOの世界的インフルエンザ・サーベイランスネットワークから受け取ったデータによると、最近のH5N1ウイルスは、認可されている2種類のノイラミニダーゼ阻害剤のうちのひとつである、オセルタミビル(oseltamivir)に感受性がある。検査されたすべての株(ヒトから分離された4株および鳥からの33株)は、この薬剤に対して試験管内(in vitro)で感受性があることが証明された。

オセルタミビルは、ヒトのインフルエンザを予防または治療するために使われる2種類の薬剤のうちのひとつである。インフルエンザネットワークの研究施設で以前行われた研究により、最近のH5N1株のほとんどが、もう1種類の薬剤の、M2タンパク阻害剤(アマンタジンとリマンタジン)には耐性であることが示された。

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(2004/2/13 掲載)