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インフルエンザA/H5感染を実験室診断するための、ヒトと動物由来検体の保存と輸送に関するWHOガイドライン

 2004年2月6日 WHO(原文

 



検体の保存:

ウイルス分離のためにウイルス輸送培地中に入れた検体は4℃に保ち、迅速に実験室へ輸送しなければならない。もしも、検体を2日以内に実験室に輸送する場合は4℃の保存でよいであろうが、それ以上かかる場合には、実験室に輸送するまで−70℃以下で凍結しなければならない。感染性がなくなるのを防ぐため、凍結融解の繰り返しは避けなければならない。血清は4℃でおよそ1週間は保存可能と考えられるが、それ以上経った場合には−20℃で凍結しなければならない。

検体は適切な輸送培地に採取し、氷上もしくは液体窒素中で輸送しなければならない。患者から検体を採取する際には常に標準予防策を講じ、バリア防御を行なわなければならない。インフルエンザ用の検体は、ガラス容器内に封印するか、または二重のプラスチックバッグに入れてテープで閉じ、封印しない限り、ドライアイス(固形の二酸化炭素)中に保存し、発送してはならない。検体チューブが凍結され縮小して二酸化炭素が侵入して検体と接触すると、二酸化炭素はインフルエンザウイルスを急速に不活化し得る。

検体の輸送:

検体の輸送は「感染性物質と診断用検体の安全な輸送に関するWHOガイドライン(WHO, 1997)」に従う。

検体を受ける実験室は検体が発送される前に、発送について知らされていなければならない。

国内での検体の輸送は、各国の現行の規約に則って行うことが必要である。

HPAI H5を含むと判明しているあるいは疑いのあるヒト由来の検体、あるいはHPAI H5感染動物由来の検体の国際的空輸に際しては、現行の国際航空輸送協会(IATA:International Air Transport Association)危険物規約に必ず従わなければならない。

  ・ 危険物索引
  ・ 診断用検体の委託輸送, 2003

2003年版のIATAの規約「診断用検体の委託輸送, 2003」によると、HPAI H5病原体が含まれていることが分かっているか、あるいはそれが疑われる検体のすべてについて、診断あるいは調査研究の目的で移送する場合には、UN 3373「診断用検体」として輸送することができる。

これ以外の目的で輸送される検体および、病原体の意図的継代のために準備された培養検体(IATAの規約で定義されている)は、適宜、UN 2814あるいはUN 2900として輸送する必要がある。

輸送するすべての検体(UN 3373,UN2900,UN2814)は、「危険物索引」に示すように3層の梱包層から成る三重の梱包をしなければならない:

「診断用検体」UN 3373は、品質の良い梱包材で包装されなければならない。つまり、輸送中の衝撃や重荷に十分耐えるだけの強さがある梱包がされなければならない。通常の条件下での輸送で起こりうる振動、温度変化、湿度変化、気圧変化によって生じる可能性があるどんな中身の漏出も防ぐように梱包し、密封しなくてはならない

一次容器は2次梱包材の中に梱包するが、通常条件下での輸送で壊れたり、穴が開いたり、2次梱包材中に内容物がもれたりしないように包装しなければならない。2次梱包は適切なクッション材に包み、最外層の梱包に入れる必要がある。どのような内容物の漏出によっても、クッション材やこの外層の梱包の保護作用を損なうことがあってはならない。

液 体
一次容器は漏出耐性で500ml以下の容量のものでなくてはならない。吸収材を一次容器と2番目の梱包のあいだに入れることが必要である。もし、複数の壊れやすい一次容器をひとつの2次梱包材に入れる場合は、容器を別々に包むか、互いに接触することを避けるように離して配置する必要がある。吸収材は一次容器の内容量全体を吸収するのに十分な量でなければならず、2次梱包は漏出耐性容器である必要がある。一次容器も2次梱包も内部圧力によって、95kPa(0.95 bar)より大きい内外圧力差が生じても漏出が起きないものでなければならない。ひとつの外装梱包容器には4Lを超えた材料を梱包してはならない。

固 体
一次容器は粉末などの漏出のない容器で、500g以下の容量のものでなくてはならない。もし、複数の壊れやすい一次容器をひとつの2次梱包材に入れる場合は、容器を別々に包むか、互いに接触することを避けるようにする必要がある。2次梱包は漏出耐性容器である必要がある。ひとつの外装梱包には4kg以上を梱包してはならない。

航空輸送の場合、完成した荷物の全体の外側の寸法は、最低10 cm以上でなくてはならない。

梱包方法は一定の実践的基準を満たしている必要がある。

内容明細、梱包条件、印やラベル、添付書類、冷却剤に関する詳細な情報は、適当な担当局、現行のIATA輸送指針、梱包材会社、クーリエ会社(利用予定の運送会社)などへ問い合わせていただきたい。

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(2004/2/9 掲載)