高病原性鳥インフルエンザ > その他の海外機関による情報

 
FAO/OIE/WHOによる結論および提言
鳥インフルエンザ制御に関する専門家諮問会議

 2004年2月3-4日 FAO/OIE/WHO(原文

 


結論および提言

現在の状況

1. 現在の流行は進展中であると思われ、地理的広がりおよび発生率の両面で拡大が続いていくことが予想される。
2. 適切な疫学的検討が緊急に必要である。
3. (各地の)流行は制御されているとは考えられず、したがって、協調した緊急的対応が必要とされる。
4. 適切な感染制御の対策を実施しなければ、地理的に離れているような国々への流行拡大の危険性は高く残り、感染が国内の家禽群のあいだに定着し、その結果この疾患が持続してみられるかもしれない。
5. アジアの養鶏業等における感染が存在する限り、ヒトの健康への脅威は続くであろう。

流行の起源
6. それぞれの国における感染源はいまだ明らかになっていないが、調査が必要な作業仮説には、野生あるいは飼育されているトリ宿主から感染がもたらされたとするものと、サーベイランス、早期の警告、地域内の家禽間における感染の移動制御を行わなかった結果として、感染が拡大したとするものが含まれる。
7. 各国の管轄官庁、OIE(国際獣疫事務局)ならびにその他の国際機関に対して、時宜を得た感染の報告がなされていないことが、問題の規模拡大に貢献した。

感染制御および根絶への戦略
1. 疾病認識や、早期発見と早期報告は、家禽類での感染を根絶することを目的とした効果的な感染制御計画において不可欠である。生物安全保障(biosecurity)は鳥インフルエンザの感染制御において必要不可欠な分野であり、感染制御対策を計画する際に本当に重要視されねばならない。養鶏業等における国内の利害関係者との協力は重要であり、獣医療機関を通じた効率的な対策の実施と効果的な監視もまた重要である。
2. 高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の集団発生において、家禽類の殺処分による一掃(stamping out)は望ましい制御方法であり、臨床症状を呈するすべての家禽群に対して用いられるべきである。この方法は、限られた地域内で感染がみられ、(疾患の外部からの)再導入の危険性が低いような、HPAIの限定した集団発生の感染制御を行うために非常に効果的であった。殺処分を含めた計画を立てる際には、適切かつ時宜を得た補償の問題も検討されなければならない。HPAI集団発生の感染制御のために、野生動物や豚の組織的な一掃を推奨する正当性はない。
3. 何らかの状況下で大量の殺処分が望まれない、あるいはその遂行が可能ではないであろうと判断された場合、ワクチン接種が適切な選択肢であると考えられる。その理論的背景とは、ワクチン接種は感染に対する感受性とウイルスの排出(期間および量の双方)を減少させ、従って新たな症例の発生率と環境中のウイルス量を減らす適切な手法であり、その結果ヒトへの感染拡大の可能性を減らすための他の対策への貢献が期待されることである。
4. ワクチン接種の使用は生物安全保全(biosecurity)を最大限にするための手段のひとつとして考えられなければならず、ウイルス特性のいかなる変化(抗原性の変化)も迅速に検知できるようなサーベイランスと共に行われなければならない。また、OIE標準マニュアル(OIE Manual of Standards)に示される国際基準を遵守していることが保証された、適切な製品の製造と品質管理がされた製品を用い実施されなければならない。
5. ワクチン接種は、疾病根絶を補助する手段、あるいは疾患を制御し環境におけるウイルス量を減少させる手段として利用することができる。ワクチン接種による疾患制御は、根絶への第一歩かもしれない。家畜管理当局の管理下での、適切なワクチン接種キャンペーンの実施は、OIE陸生動物衛生規約(OIE Terrestrial Animal Health Code)に従っている場合に、世界通商と矛盾しない。殺処分とワクチン接種とは互いに排他的ではなく、一緒に実施するかまたは連続して行うかは、産業の体制と感染制御計画の段階によって異なるであろう。ワクチン接種は、国家当局によって決められた成果目標に基づき、対象集団および対象地域の慎重な選択を行い、戦略的な方法により実施されるべきである。
6. 緊急ワクチン接種の実施と、それに引き続く効果の監視のために必要な事柄は、速やかに確立し、その実行可能性を評価されなければならない。一旦需要の推定が行われれば、ワクチン製造業者はその緊急事態に対応する能力を有する。
7. 「ワクチン接種を受けた動物と感染動物の区別(DIVA)」を、適切な診断検査によるか、指標鳥(sentinel bird)を用いるか、その双方で行う手法が推奨される。不活化された異種あるいは同種のワクチンのみが、緊急使用における候補である。

食品の安全性を含むヒトの健康問題
1. 感染地域において養鶏業等で働く人々へのヒト感染を防止する予防策を、直ちに実施する必要性に対する意識の向上が必要である。
2. 個人防御具(PPE)の入手可能性、使用訓練、適切な使用は、感染が疑われた、または確認された鶏舎等で働く者と、動物の大量殺処分を行う者の防御のために、確実でなければならない。また、曝露された者の健康状態は、WHOの推奨に従い監視されなければならない。
3. 感染した群れの家禽類は、環境上安全な方法で処分されるべきであり、動物およびヒト用の食物に加工するべきではない。
4. 現在トリのH5N1集団発生が起こっている地域における、またはその地域より搬入された鶏肉等の加工製品および卵は、公衆衛生上危険ではない。手洗い、交差汚染の予防および鶏肉等加工物の完全な加熱調理を含めた、取り扱う際の適切な衛生管理が、一般的な予防策として強調される。
5. H5感染が確認された国々はすべて、動物から分離された適切な数の代表性のあるウイルス株を、OIE/FAO(国連食糧農業機関)のリファレンス研究施設まで、また動物とヒトから分離された株をWHOインフルエンザサーベランスシステムへ時宜に提供すべきである。
6. 家禽の殺処分を行う人は、重複感染および遺伝子再集合(reassortment)の危険を減少するために(ヒト)インフルエンザワクチンの接種を受けるべきである。

養鶏等の産業部門の再生、再仕入れ、および再構成
1. 市場の再生を支援する国家的対策の鋳型は、多機関のあいだの協力によって作成されなければならない。
2. 輸出機会の回復のためには、当該国の家畜管理当局と獣医療機関に信用性があることが必須要件である。
3. 地帯区分(Zoning)や区画分割(Compartmentalization)の考え方が、市場出荷の機会の回復の助けになるかもしれない。
4. 農場へ再度家禽を入れる際には、家禽の防御対策と適切なサーベイランスの実施が必要となる。
5. 生産部門の機構再編が必要かもしれない。

本会議は以下の事項を提言する:
1. 感染制御や構造改革計画を作成する際には、動物およびヒトの健康と地方の生活を考慮に入れること。
2. HPAIやその他の優先順位の高い疾患の、長期にわたるサーベイランスや感染制御を実施するためには、市民の教育、獣医学的トレーニング、国や地域の体制強化が重要であること。
3. 感染制御計画は早期に強化し監視すべきであること。
4. 各国は、国家鳥インフルエンザ対策本部といったような、医学や獣医療当局が報告を行ったり、サーベイランスや感染制御に関して議論したりできる統合本部を設立すること。
5. 殺処分による一掃、生物安全保障の強化、ワクチン接種、監視を含む対策が、家禽類における感染を制御し根絶するうえで、重要な方法であること。
6. 家畜管理当局によるサーベイランスの改善と、感染の透明性のある迅速な報告が、国、地域、および国際的段階において要求されること。
7. ヒトおよび動物の健康に大きな影響を与えるようなインフルエンザウイルスの、短期的および長期的な感染制御に対して、広範囲の国際的な協力体制が確立されるべきであること。
8. 適切な技術的および組織的な能力強化を含む、感染制御計画への(資金)援助が急務であること。
9. OIEやWHOの協力を得て、実地計画の調整にFAOが指導的役割を果たす形で、提言の採択や実行を支援するために、アジア地域の地区緊急会議を開催すること。
10. トリ・インフルエンザウイルスの、ヒトおよび動物における感染制御に必要な知識や対策の不足している部分への取り組みを行っていくうえで、ワクチン、診断検査における、また特に家畜や野生動物宿主の役割についての疫学分野で、分野横断的で国際的な協力関係による共同研究活動が支援されること。

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(2004/2/18 更新)