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高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)―更新18

 2004年2月5日 WHO(原文

 



ベトナムの(ヒトの症例)の状況

ベトナムの保健省はWHOに対し、さらに2例のヒトのH5N1型感染例が確認されたと報告した。両症例とも死亡した。

この2例は16歳と17歳の若い女性で、ベトナム南部から報告された。両者ともにホーチミン市(Ho Chi Minh City)の病院で治療された。16歳の女性は2月3日に、17歳の女性は1月27日に死亡した。

これらの症例により、ベトナムの検査により確定したヒトのH5N1型感染例は15例となった。このうち11例が死亡、2例が入院中、2例は回復している。

タイの(ヒトの症例)の状況

タイの公衆衛生省は、国内第5例目のヒトのH5N1型感染例を確認した。この症例はカンチャナブリー県(Kanchanaburi province)の6歳の男児で、1月24日に発症し、2月2日に死亡した。

タイの検査による確定例は、5例ともすべて死亡している。

FAO / OIE / WHOによる鳥インフルエンザ対策に関する専門家諮問会議
(ローマ,2004年2月3日−4日)

この諮問会議の間に出されたいくつかの結論と提言は、アジア数カ国の家禽類における高病原性H5N1鳥インフルエンザの、広範な集団発生の影響からヒトを守るためのWHOの勧奨を強化するものであった。

諮問会議に参加した専門家らは、特に、H5N1型のトリ・インフルエンザウイルスへの曝露リスクが高い、養鶏業者と殺処理従事者たちにおいて、ヒト感染を防止するための方策を直ちに適用することの必要性を認識した。これらの人々に対しては、個人防御具(PPE)が利用可能でなければならず、またこの装具の適切な使用に関する訓練も必要である。WHOは殺処理従事者の予防対策に関するガイドライン(高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御に対するWHOの暫定的勧告 [原文])を発表している。

専門家は更に、ヒトがH5N1型とヒト型のインフルエンザウイルスに、同時に感染する機会を減らす必要性を認めた。そのような重複感染は、トリとヒトのインフルエンザウイルスに遺伝子を交換する機会を与え、結果的に新たなインフルエンザウイルス亜型の出現に至る可能性がある。諮問会議は、濃厚な曝露を受ける可能性のある養鶏業者に、既存の今季のインフルエンザワクチンを接種することを推奨した(このワクチンは、現在流行しているヒト・インフルエンザウイルスへの感染は防御するが、H5N1型に対する感染防御はしない)。WHOは今季のワクチンの接種対象を絞った接種に関するガイドライン(H5N1感染のリスクがある個人に対する 今季のヒトインフルエンザのワクチンの適用に関する指針 [原文])を発表した。

WHOの現在の状況への対策の優先事項は、H5N1型ウイルスの動物宿主の速やかな制御対策を含む。これによって、ヒトにおいてさらに多数の症例、死亡例が出ることと、新たなインフルエンザウイルス亜型が出現するより多くの機会ができるという、ふたつのリスクを低減することになる。諮問会議の提言はまた、この優先性も支持している。

諮問会議は、感染した一群の殺処分あるいは「一掃」が、引き続き家禽類におけるH5N1集団発生を制御する優先的選択枝であると結論づけた。しかしながら、家禽類における現在の集団発生は、その規模や地理的広がり、そして養鶏業と地方農家の双方に対して経済的に壊滅的影響を及ぼしている点において、歴史的に前例を見ない。

殺処分が感染した家禽群に対する優先的選択枝である一方、健康な家禽群に対する対象を絞ったワクチン接種は、トリ宿主へのH5N1型ウイルスによる危険の迅速な低減を達成する補助的手段として、使用することができる。これは、家禽における疾患の制圧と、ヒトにおいてさらに症例や死亡例が出ることの防止の両方とも支援する目標をもつ。

ワクチン接種単独では、現在の家禽における集団感染を制御下に持ち込むには不十分であろう。

諮問会議に参加していた専門家らは、以下のように強調した。ワクチン接種が補足的な制御手段として考慮されている場合において、ワクチン接種は、発症および曝露を受けた家禽すべての殺処分、厳密な生物的安全性(biosecurity)、検疫、その他この疾患がさらに拡散するのを防ぐ目的をもった手段を含む、包括的戦略とともに用いなければならない。

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(2004/2/6 掲載)