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高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)―更新15

 2004年2月2日 WHO(原文

 

タイにおいてヒトの確定例が追加確認;中国が家禽における感染拡大の疑いを発表;
ヒト−ヒト感染の可能性に関する調査


タイで新たなヒトの症例を確認

タイの保健当局は本日、H5N1型の鳥インフルエンザが検査で確定された一例のヒト症例について発表を行った。この症例は58歳の女性で、本日病院で死亡した。

この最新の症例により、タイにおけるヒトの症例は計4人となり、うち3人が死亡した。

今までのところH5N1感染のヒト症例は、タイとベトナムでのみ報告されている。両国とも家禽で、この鳥インフルエンザの広範囲な集団発生が起こっている。タイの新規症例により、これら両国の症例数は総計14人となり、うち11人が死亡した。

中国は家禽類のH5N1感染が別の地域へ拡大の疑いありと発表

WHOは中国当局より、家禽類における高病原性H5N1型鳥インフルエンザの集団発生が、さらに中国国内の別の地域へも拡大している疑いがあるという報告を受けた。

新たな家禽類での集団発生と疑われる事例は、東部の浙江省(ガチョウ)、南西部の雲南省(鶏)、中央の河南省(鶏)、北西部の新疆ウイグル自治区(鶏)の農場で検知されている。

加えて、湖北省(鶏とアヒル)、広東省(ガチョウ)での家禽類での集団発生の疑いが報告されている。両省は以前にも集団発生を報告している。

これらのすべての場所において病気になった鳥から採取された検体の、H5N1ウイルス株の存在確認の検査が今や中国で行われている。

高病原性H5N1型鳥インフルエンザの家禽農場での集団発生の、確定したものと疑い例すべて合わせると、中国本土の31省/自治区/直轄市のうち、10省/自治区にある農場から報告されている。

先週、家禽類での集団発生を追加報告された地域は、広西チワン族自治区、湖南省、湖北省、上海直轄市、広東省、安徽省である。これらのうち、高病原性H5N1型鳥インフルエンザ感染は広西チワン族自治区、湖南省、湖北省で確認されている。

中国では現在までに、ヒトでのH5N1感染は報告されていない。

ヒト−ヒト感染の可能性に対する調査

WHOはベトナムのタイビン省(Thai Binh province)の1家族における呼吸器疾患のクラスター(患者の集積:cluster)の調査を行った。このクラスターは、31歳男性と、彼の姉妹二人(23歳と30歳)と、彼の妻(28歳)を含んでいる。男性と2人の姉妹はすでに死亡している。妻は完全に回復した。週末に報告された検査結果では2人の姉妹のH5N1感染が確認された。男性とその妻は検査が行われていない。

この家族は、1月3日に行われるこの男性の結婚式の準備のために、12月下旬に集まった。男性と姉妹のうちひとりは、1月4日の食事の準備をするときに、アヒルを処理していたと報告されている。しかしながら、調査では姉妹のもうひとり(アヒルを処理していない方)と彼の妻については、家禽との直接的接触を明らかにすることが出来なかった。

この2症例に関して、家禽への直接的な曝露を示す証拠が欠如していることから、WHOの疫学者らは別の様々な説明を考えている。2人の姉妹は共に、この男性が入院する前に看病をしていたことがわかっており、従って密接な曝露を受ける機会があったと考えられる。この密接な暴露に続く直接的なヒト−ヒト感染が、ひとつの可能性がある説明である。

しかしながら、感染している鳥、あるいはその他の環境のウイルス源との接触が、除外されていない、可能性のあるもうひとつの感染経路である。家禽におけるH5N1の集団発生がベトナムで広範に広がっている。大量のウイルスが鳥の糞中へ排出され、環境中でしばらく残存することができる。

高病原性のトリインフルエンザウイルスの限定されたヒト−ヒト感染は、ごく最近2つの事例(1997年の香港、2003年のオランダ)において発生したことが報告されているので、まったく予想外のことではない。

ベトナムの地方当局は、この他の家族や結婚式の招待客に発病者はいないと報告している。結婚式の行われた地域の人々や、これらの症例の診療にあたった医療従事者にも発病者はみられなかった。

WHOは感染源を特定するためには、個々のヒトのH5N1症例に対する調査を継続する必要性があると強調している。

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(2004/2/3 掲載)