高病原性鳥インフルエンザ > 海外情報

 
H5N1感染のリスクがある個人に対する 今季のヒトインフルエンザのワクチンの適用に関する指針

 2004年1月30日 WHO(原文

 



WHOは、現在アジアに蔓延しているH5N1型トリインフルエンザウイルスに、曝露するリスクが高い特定群に属する人に対して、毎年季節的流行するインフルエンザに対する(今季の南半球の)ワクチンを、対象を絞って接種することを提唱する。対象を絞った今季のヒトインフルエンザに対するワクチンのワクチン接種は、現在家禽のH5N1型の高病原性鳥インフルエンザの集団発生が起こっている国において、ヒトにおいてトリとヒトのインフルエンザウイルスに同時に感染する機会を減少させるためのいくつかの対策のひとつとして推奨されている。同時感染の機会を減らすことは、(ウイルスにおける)組み換え(reassortment)の機会を減らし、その結果として、世界的流行の可能性を秘めた、まったく新しいインフルエンザウイルスの新興が起こる機会を減少させることになる。

免疫付与の対象となる特定群

1.鳥インフルエンザ(H5N1)に感染した、また感染が疑われる、家禽あるいは家禽農場に接触が予測されるすべての人々。特に(a)家禽の処分にかかわる処理業者、(b)H5N1が報告されたか、疑われているか、あるいは家禽処分が実施された家禽農場に、居住し働いている人々。

2.既知の、あるいは確定したインフルエンザH5N1のヒト症例の毎日の診療にかかわる医療従事者。

3.ワクチンの十分な供給を前提として、鳥の間でインフルエンザH5N1の発生が確認されている地域の、救急救命施設の勤務者。

考慮すべき点

・ 1957年と1968年に世界的流行したウイルスは、ヒトとトリのインフルエンザAの亜型の組み換えウイルスであった。

・ ヒトとトリのインフルエンザウイルスの遺伝子組み換えは、現在のヒトのインフルエンザAのH1あるいはH3亜型と、家禽からのトリインフルエンザウイルスに共感染したヒトの中で起こる可能性がある。

・ 現在の世界的流行間期(inter-pandemic)のワクチンの接種では、ヒトのH5N1鳥インフルエンザによる感染を防止することはできない。どちらかといえばそれは、ヒトとトリのインフルエンザウイルスの共感染と遺伝子組み換えが、ヒトの中で起こるリスクを最小限にする。

・ 防御に有効なレベルの抗体力価は通常、世界的流行間期のワクチンの接種後2週間で検知できる。抗体産生が遅れたかどうかにかかわらず、仮にこの2週間の内に曝露を受けたとしても、人々はワクチン接種による利益を受けると考えられている。

・熱帯および亜熱帯の地域では、ヒトインフルエンザの流行は一年を通じて起こる。

現在の疫学的データは、感染が認められる地域の住民すべてに対するワクチンの集団接種(mass vaccination)を、肯定するものではない。

現時点では国際旅行をする人に対して、家禽の鳥インフルエンザの現在の集団発生と関連した、特別なインフルエンザワクチン接種の要請は無い。国際旅行と健康(インフルエンザ感染予防を含む)に関する推奨は、WHOの出版物である「International Travel and Health」から入手可能である。

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(2004/2/2 掲載)