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鳥インフルエンザA(H5N1)―更新7

 2004年1月24日 WHO(原文

 



ベトナムでさらに2人確定

ベトナムでヒトのH5N1鳥インフルエンザ症例が更に2例実験室検査で確定された。症例はともにホーチミン市在住の小児で、8歳の女児と13歳の男児である。男児は1月22日に死亡した。女児は入院中で症状は安定しているものの、危険な状態である。

今回の2症例はベトナムの南部で確定された初めてのケースである。これでベトナムのH5N1の症例は、ハノイの5症例を含めて7人となった。ベトナムの7症例のうち、2003年12月30日から6人(5人の子供と、30歳の女性1人)が死亡した。

ベトナムのWHOチームは、衛生当局と共同して現在の状況を評価し、疫学的調査を行い、最も適切な疾病制御対策を明らかにするべく取り組んでいる。

現在の状況の概要

昨日、タイ衛生当局は2人の男児において感染を確認したと公表した。この他にもH5N1感染を示唆する呼吸器症状を有する患者の検査が行われていて、結果は来週に出ると思われる。

現在ベトナムとタイの2国のみが、最近の集団発生においてH5N1鳥インフルエンザのヒト症例が発生したことが知られている国である。ヒトにおけるH5N1鳥インフルエンザの集団発生が初めて記録されたのは1997年の香港においてであり、その際には18人が重症化し6人が死亡した。

最近のベトナムとタイで起こった人の症例は、アジアの各国の家禽集団における高病原性H5N1鳥インフルエンザの歴史上先例のない感染拡大と同時に発生した。2003年12月中旬以来、家禽におけるH5N1の集団発生は大韓民国、ベトナム、日本、タイ、カンボジアで確認されている。この他の国で家禽集団における死亡が発見されており、その原因は現在調査中である。

ベトナムでは家禽におけるH5N1の感染が61州のうち23州で発見されている。2003年12月23日から約2,900万羽の家禽が、死亡したか病気のために処分された。

WHOは、H5N1に感染あるいは曝露した家禽を迅速に処分することを、更なるヒト症例の発生を予防し、インフルエンザの世界的流行を引き起こす能力を持つ新しいインフルエンザウイルスの出現の可能性を防ぐための主要な防衛線であると特定している。

現時点では、WHOはヒトからヒトへの感染伝播が起こっている兆候をつかんでいない。

WHO世界的インフルエンザサーベイランスネットワークの研究所は、最近のアウトブレイクで採取したトリおよびヒトのウイルスを調査している。予備段階での結果によると、これらのウイルスは、近年過去にアジアで分離されたその他のH5N1株とは有意に異なるものであり、従ってワクチン製造に使用する新たな原型となる株を開発する必要がある。

鳥あるいはヒトのいずれかの集団発生に現在直面しているすべての地域からウイルスが必要である。これらのウイルスから得られた情報は、WHOのネットワーク研究施設が、H5N1の原型となる株をワクチン製造者に対して開発するために使われる。すべての集団発生の地域から得られたウイルスに関する情報は、WHOによって推奨されたワクチンの組成が現在流行しているすべてのH5N1株からヒトを守ることを確実にするために必要である。

食品安全とのかかわり

H5N1鳥インフルエンザウイルス株が初めてヒトに感染したことが判明した1997年以降、全世界で記述されている実験室で確認された症例は30例に満たない。香港での1997年の集団発生は幅広く研究されている。しかしながら、ヒトにおけるこの疾患やその感染経路に関するデータは、症例の数が少ないために限定的である。

香港の集団発生の調査では、生きている感染した家禽との濃厚接触が18例すべてのヒト症例の感染源と断定された。この理由から、家禽類に最近高病原性H5N1鳥インフルエンザの集団発生が見られた地域では、生きた家禽を直接消費者に売る行為は慎むべきである。

いくつかの国では動物の健康を守るために流通制限が取られているところもあるが、現在利用可能なデータに基づいてWHOは、家禽集団にH5N1型鳥インフルエンザの集団発生が現在見られている地域内ないしはその地域から到着する家禽加工製品(冷蔵あるいは冷凍された1羽丸ごとの生肉、それらに由来する製品)や卵が、公衆衛生に対する危険要因になるとは結論付けていない。

インフルエンザウイルスが適切な加熱により死滅することはよく知られている。手洗い、交差感染の防止、徹底した加熱(70℃)を含めた、家禽類の製品を取り扱う際の良好な衛生習慣の重要性を、WHOは継続して強調し、この特殊な状況下で繰り返し述べる。


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(2004/1/27 掲載)