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ヒトにおける鳥インフルエンザH5N1感染:動物宿主の制圧の緊急な必要性―更新5

 2004年1月22日 WHO(原文

 



種々のH5N1株による高病原性鳥インフルエンザの流行は、2003年12月中旬以来アジアの一部で報告されている。その結果、何百万もの家禽が死亡するか殺処分された。何千もの人が殺処分に従事した。

現在の状況は、農業や養鶏業と同様に人の健康に深刻な懸念が生じている。鳥におけるH5N1ウィルスの迅速な制圧は、国際的な公衆衛生の重要な問題として高い優先事項とされなければならない。

WHOは農業分野の適切な対策が、緊急問題としておよび国際レベルの公衆衛生予防のために実施されることを確実にするために、国連食糧農業機関(FAO)及び国際獣疫事務局(OIE)に高いレベルで密接に連携している。共同調査はベトナムで現在進行中である。

通常トリおよびブタのみに感染するすべての鳥インフルエンザウイルスの中で、H5N1はヒトに高い死亡率を伴う重症疾患を引き起こす特有な能力を持っているかもしれない。

地域の家禽における高病原性H5N1インフルエンザの大規模流行が、複数の国で同時発生することは歴史上前例がない。現在の状況はさらに悪化するかもしれない。トリ集団でこの疾患は高い感染力をもち急速に死に至り、養鶏場間で容易に拡散する。野生の渡りをする水鳥は、地域的な鳥の群れに感染を拡散することができる。家禽において進行中の流行がさらに広がる可能性は、感染が認められた国の内部及びその他の国に対して大いに存在する。

これら全ての理由により、H5N1株は現在確認されているより広範囲の国々のトリ集団及び環境に存在している可能性がある。感染したトリが糞便中に大量のウィルスを排出することができることが研究により示された。特に温度が低い場合、ウィルスは罹患したトリの組織や糞便及び水中に長い間生存することができる。水中では、ウィルスが22℃で4日まで、0℃で30日以上生存することができる。ウィルスは、冷凍検体の中で永久に生存する。

現在家禽に見られる高病原性鳥インフルエンザの大規模流行及び環境中のウィルスの広範な存在は、人への曝露及び感染機会を増加する。さらに、それらはヒトと鳥インフルエンザウイルスが遺伝子を交換する機会を増加させる。これはヒトがヒト及び鳥インフルエンザウイルスに同時に感染する場合に発生する可能性がある。このような共感染が頻回におこると、効率的で持続的なヒト-ヒト感染をおこすのに十分なヒトの遺伝子を持った、完全な新型インフルエンザウイルス亜型が出現する可能性が増加する。

調査によると、H5N1の直接的なトリ-ヒト感染のリスクは、生きた感染家禽に濃厚接触している人が最も大きい。1997年に香港でおこったH5N1によるヒトの感染者18人のうち17人は、生きた家禽市場で飼われていたトリとの接触が感染の原因だと考えられている。集団感染の発端である残りの1人は、高病原性H5N1鳥インフルエンザの集団感染がおこっていた養鶏場のトリとの接触に関連があった。18人中6人が死亡した。

養鶏業者および、殺処分に従事する者では、職場での曝露が起こり得る。

世界的流行を起こし得る新型インフルエンザウイルス亜型の出現を防ぐためには、動物集団のH5N1ウイルスを迅速に根絶する事が必要不可欠な手段である。この手段はトリ集団のでのさらなる拡散を予防するだけでなく、ヒトへの感染の機会も減らす事になる。しかしながら、現在の状況では、田舎において鶏が飼育されている多数の「裏庭」農場が、ヒトへの全ての曝露を制御する上での問題をより悪化させている。

感染したり曝露を受けたトリを早期に殺処分する事が強く推奨されるが、殺処分作業の際の感染予防も最優先事項である。殺処分作業では大人数の作業員が、短時間ではあるが強力にウイルスの曝露を受ける可能性がある。

1997年に香港当局は全ての家禽(推定150万羽)を3日以内に処分した。この迅速で包括的な対策のおかげでインフルエンザの世界的流行が回避できたと多くの専門家は考えている。殺処分作業は訓練された政府の作業員によって実施され、その多くは防御のためのマスク、手袋、ガウンを着用していた。その後の調査で、ウイルスへの曝露を示す抗H5抗体が感染家禽の殺処分作業に従事した人の約3%に検出されたが、この曝露によって重症呼吸器疾患に罹患した者はいなかった。

2003年にオランダで高病原性鳥インフルエンザH7N7のトリでの集団発生がおこった時、83名の人が軽症の病気にかかり獣医が1名死亡している。1週間以内に約3,000万羽の家禽が処分された。

高病原性鳥インフルエンザに関する詳細な情報は、WHO fact sheet 、FAO web siteOIE web site から得ることができる。殺処分作業の際の安全対策に関する情報は、WHO西太平洋事務局から近々出される予定である。

2004年のH5N1の実験室的診断の特徴

WHO世界インフルエンザサーベイランスネットワークの実験室部門は本日、ベトナムでヒトとトリから分離されたH5N1株の遺伝子配列の決定と抗原性の特徴について討議した。最初の結果を見ると、これらのウイルスは、1997年と2003年の香港のH5N1鳥インフルエンザの集団発生の際に得られた株とは有意に異なっており、ウイルスが変異している事を示している。

WHOによるヒトにおけるH5N1感染の迅速な検出のための診断キットを更新する作業や、ワクチン製造のための原型となるウイルスの開発は続けられている。他の現在感染の認められている国のトリから分離したウイルスは、更なる実験的調査のために緊急に必要である。このような調査は、現在流行しているH5N1株からヒトを守るワクチン株の推奨や開発のためにWHOが必要としている情報の一部である。

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(2004/1/23 掲載)