高病原性鳥インフルエンザ > 海外情報

 
ベトナムでのヒトおよびアジアでの家禽類における高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)−更新2
 2004年1月16日 WHO(原文
 



昨日発行されたファクトシートに詳細が記載されているが、最近アジアの数カ国で報告されている高病原性鳥インフルエンザの流行は、人類の健康に対する潜在的な重要性の故に詳しく監視しなければならない。大韓民国、ベトナム、日本において報告されているすべての鳥での流行は、鳥インフルエンザウイルスのH5N1株が原因である。

今週前半、ベトナム・ハノイで重症呼吸器疾患にて入院した患者3名から採取した検体中に、H5N1亜型の存在が臨床検査で確認された。本日、さらにもう一人のベトナム人患者にH5N1の存在が臨床検査で確認された。これら4人の症例はすべて死亡している。

呼吸器症状を有するほかの患者数名はハノイで観察下におかれている。ヒトにおける鳥インフルエンザの症例定義がベトナムにおいてさらなる症例の発見を促進するために導入され、その結果サーベイランスが改善している。

鳥集団への重大な影響は別として、このH5N1亜型はヒトの健康に対する潜在的な危険性に関し相当重要な特性を持っている。アジアの鳥から最近分離されたH5N1ウイルスは急速に変異することが知られており、また他の種に影響するインフルエンザウイルスから遺伝子を獲得する傾向があることが知られている。

さらに、鳥における大規模で致死率の高い集団発生が同時に発生することは史上初めてである。これらの集団発生が、H5N1が世界におけるこれらの地域での鳥に定着していることを示唆しているかもしれないことを、WHOは懸念している。鳥におけるすべての症例に対する包括的サーベイランスは困難であるから、鳥での流行に関する真の地理的発生状況は現時点では完全には評価できない。

過去のインフルエンザの世界的流行の開始に有利に作用したことが知られているいくつかの状況の存在が示唆されているので、ベトナムでの集団発生は特に懸念される。その状況の中でも最も重要なのは、変異を受けやすく高い病原性を示す鳥の株と一緒にヒトのインフルエンザウイルスが流行していることである。H5N1は近年2度にわたり、ヒトに対して高い致死率の重症な疾患を引き起こし、この3週間に再びその状況を引き起こしている。

鳥における広範囲の流行はヒトへの暴露の機会を増加させる。ヒトの感染者数の増大は鳥とヒトの株の間で遺伝物質の交換をする機会を増加させる。その結果として新たなウイルス亜型が出現し、そしてそのウイルスがヒトからヒトへ容易にそして持続的に拡散する能力を持つことが証明されれば、インフルエンザの世界的流行が始まる条件が満たされる。

ベトナムでのヒト死亡例から分離されたH5N1株は今週前半部分的にシークエンスされた。すべての遺伝子は鳥由来であったが、それはこのウイルスがヒトインフルエンザウイルスから遺伝子をまだ獲得していないことを示唆している。ヒトインフルエンザの遺伝子を獲得することにより鳥由来のウイルスがヒトからヒトへと容易に感染伝播する可能性を増大させる。

これらの懸念に対応して、WHOとその協力組織は以下の3つの主な目標に達するために必要な活動を強化する:H5N1によるヒトの死亡および罹患を減少させること、新たなインフルエンザの世界的流行が出現する機会を減少させること、そして、緊急に必要な国際的・国内的研究を開始すること。特定の一連の研究により、現に影響を受けている国々、あるいは他の国で、ヒトの健康に対する鳥での現在の流行の重要性をより適切に科学的に評価することができるだろう。

WHOの世界的インフルエンザネットワークに属する実験室は、異なる国の感染鳥やヒトの症例から分離されたウイルスを、分子レベルで研究している。これらの分子的「探偵作業」は、現在流行しているウイルスの起源を同定し、それらがどういった関連を持つのかを明らかにし、ウイルスがどのようにして発生したかを解明することに役立ちうる。

ヒトにおいて現在起こっている集団発生は重大であるが、ヒト感染に対する動物の保有体を撲滅する断固たる処置がとられれば、集団発生は制御されるとWHOは信じている。関係する国におけるヒト呼吸器疾患のサーベイランスは強化された。WHOは動物の感染に対するサーベイランスを強化する必要性に関して国々に警告を発している。感染ないしは暴露の可能性のある家禽群を殺処分することは、いくつかの国における鳥インフルエンザの過去の流行を食い止める上で有効であると証明された標準的な感染制御策である。

H5N1は鳥インフルエンザの15の亜型のうち、現在までにヒトに重大な集団発生を引き起こした唯一のものである。1997年の香港では、H5N1は18人を発症させ、うち6人が死亡した。2003年2月には(訳注:香港)、H5N1は2人を発症させ、うち1人が死亡した。

その他の鳥亜型(H7N7とH9N2)にヒトが感染した3つの事例が1999年と2003年に記述されているが、軽症であり死亡例は全部で1例にすぎない。

1997年のヒトでのH5N1の集団発生の際、香港の全ての家禽類を3日以内に殺処分したことがインフルエンザの世界的流行を防いだと多くの専門家により考えられている。

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(2004/1/19 掲載)